良い接客とは?お客様が喜ぶ接客の具体例と施策をご紹介
目次
“接客”はサービス業にとって、一番と言ってもいいくらい重要な課題です。
良い接客を提供することで、お客様は喜び、ファンになってまたご来店いただけます。
より良い接客を目指し、どのような施策を立て、継続的に実施していけば効果が出るのか悩んでいる担当者や経営者は多いと思います。
そこで今回は、あらためて良い接客とは何かを考え、お客様が喜ぶ接客の具体例と、実際に成功している店舗や企業の施策を紹介します。
良い接客とは

良い接客を提供することで、お客様に喜んでいただけます。
お客様から直接言葉をいただけた場合は、お客様が喜んでいただけたことを評価できますが、お客様が接客について普段どう感じているかを具体的に評価するのは難しいのが実態です。
良い接客ができているかを知るには、以下の方法があります。
・ヒヤリング、アンケート、インタビューを自社で実施する
・リサーチ会社に依頼する
・覆面調査を実施する
また、何らかの施策を実施し、その結果良い接客ができている店舗や企業では、以下の変化が期待できます。
来店客数の増加
良い接客ができていると、お客様は身内や友人に店舗の良いイメージを話してくれるでしょう。
また、SNSなどでお客様が発信する自社の店舗や商品・サービスの情報は肯定的な内容になり、新規顧客の来店数が増加する可能性があります。
特に地域性の高いビジネスの場合、SNSを含めた地域のクチコミ情報は、新規顧客の獲得に大きな影響を及ぼします。
近年では、来店分析やAIカメラを用いた接客データの可視化が進んでいます。
どの時間帯に声掛けをしたか、どの接客が購買につながったかを定量的に把握することで、店舗ごとの接客効果を継続的に改善する事例も増えています。
AI接客の活用例
AIカメラは、以下のように活用できます。
・接客が必要な顧客を見つけ素早く対応
・検知機能による性別や属性のデータ化
・AIカメラで収集した情報を分析
購買率の向上
良い接客ができていると、お客様の購買意欲が高まり購買率が向上します。
では、お客様の購買意欲が高まる接客とはどのようなものなのか、2016年、会津大学短期大学部産業情報学科経営情報コースにて発表された論文を紹介します。
本調査では、「接客が消費者購買意欲に影響する要因―ファッション販売に着目して―」というテーマで調査がおこなわれました。その中の質問項目をいくつか抜粋します。
| Q.どんな接客が好印象だと感じますか?(※一部抜粋)
・つきまとわない ・笑顔 ・商品知識が豊富
Q.接客を受けて購入にいたる要因は何だと思いますか?(一部抜粋) ・コーディネートを提案してくれた ・納得できるアドバイスをしてくれた
|
また、本調査で「接客されたい」と答えた人の理由として、以下があります。
・より良い商品がほしいから。
・迷っているときにコーディネートのアドバイスをもらえると助かる。
・一人での買い物が多く、人の意見を聞きたいから。
・参考になるし楽しく買い物ができるから。
・その道のプロに教えてもらえるから。
なかには、接客自体を苦手とするお客様もいますが、上記のようなお客様に良い接客ができれば、購買率も上がると言えるでしょう。
リピート率の向上
良い接客を受けたお客様は、再度店舗に足を運ぶ可能性が高くなります。
限られた市場の中で競合他社に負けないためにも、固定客を増やしてリピート率を向上させることは重要です。
では、リピートにつながる接客とはどのようなものなのかと言うと、お客様を覚えることが大切です。
お客様一人ひとりを覚えて、それぞれの様子や好みに合わせた接客をすると、お客様は「特別な存在だ」と感じます。
たとえば、以下のような接客が効果的です。
・「普段の〇〇様の服装であれば、こちらも合っていますよ」
・「以前来店されたときにAのメニューと悩まれていましたよね。今日はAにしてみますか?」
・「こちらの商品なら、旦那様も喜んでくださると思いますよ。以前、旦那様といらした際に、そんなお話させていただきましたよね」
このように、お客様の私生活や趣味趣向に合わせた提案をすることで「相談しやすい存在」となり、リピートに繋がっていくのです。
お客様が喜ぶ接客の具体例
お客様が喜ぶ接客の具体例としては以下の項目があげられます。
ホスピタリティー
・気持ちがいい笑顔があった
・すれ違い挨拶があった
・すれ違い声の大きさが適切だった
・すれ違いアイコンタクトがあった
・従業員の身だしなみに清潔感があった
・名札の名前が読み取りやすかった
・従業員同士で業務以外の私語や雑談をしていなかった
・陳列棚で作業中の従業員に近づいたら、作業の手を休め、見たい場所をあけてくれた
接客スキル
・商品を見ていると従業員から自然なアプローチがあった
・興味や関心を引くアプローチを受けた
・アプローチ時にアイコンタクトや笑顔があった
・商品の質問をすると商品の前まで誘導案内してくれた
・説明や提案が分かりやすかった
・ニーズに合わせた商品を具体的に提案してくれた
・説明やお薦めは笑顔でしてくれた
・対応した従業員の言葉づかいが丁寧だった
レジ・チェッカー
・商品を持ちレジに向かうとすぐに気付き商品をお預かりする姿勢があった
・商品の金額、支払った金額の読上げがあった
・商品を丁寧に取り扱っていた
・「ありがとうございます」と丁寧なあいさつがあった
言葉遣い
・親しみと馴れ馴れしさを間違えない
・横文字を多く使わず、わかりやすい言葉で接客する
・早口の接客をしない
・流行り言葉や略語を使わない
・「ウケる」など、どれだけ仲良くなっても友達のような言葉遣いはしない
接客の施策事例
この章では、お客様に喜ばれる接客に向けた施策に成功している店舗や企業の事例を紹介します。

飲食店A店
全国展開で急速に成長しているラーメン店K社では、従業員の定着率が非常に高いA店の覆面調査の結果を「K社らしさ」を創造していくために欠かせない成功事例として、全国の店舗や従業員にトップダウンで継承しています。
A店は、職場の人間関係が良く、店舗運営のための勉強も真面目かつ積極的に行っている店舗で、従業員の定着率が非常に高い店舗であることが社内で認識されていました。
覆面調査の客観的な調査で、以下のような具体的な評価がされています。
・「笑顔・元気・気配り」というA店のコンセプトとして掲げている言葉を従業員の気配りや笑顔の接客で実現している。
・メニューを置く位置に強くこだわり、メニューホルダーに立てかけるのではなくテーブルの上に扇型に広げて置く方法をとっている。ランチタイムメニューを一番上に配置することで、お客は席に着くと同時にメニュー選びを瞬時に行える。
・ラーメン店でよく聞かれる「へい!らっしゃい!」といった言葉は使わない。「いらっしゃいませ、こんにちは」という、物腰の柔らかな親しみのこもった声がけは、どこか品がよく、好印象だ。言葉遣い一つで心に余裕が生まれ、従業員は安心感を抱くと思われる。従業員同士にも思いやりの心が生まれるだろう。店内が常にアットホームな空気感に包まれているのは、言葉遣いが作用しているようだ。
覆面調査では、お客様に喜ばれる接客として以下の3点をあげています。
・明るくテキパキとした口調で分かりやすい案内があり、とても好印象だった。親切で良く気がつく従業員だと感じた。
・忙しい時間帯であったが、食後の食器はすぐさまに片付けるなど逐一丁寧に作業をしていたので大変印象がよかった。
・次から次へテキパキと精算をこなし、待たされているという感じがないほどスムーズな応対がとてもよかった。
さらに、感動したサービスポイントとして、アルバイト従業員の手作りポスター、完成度の高い手描きメニュー、ポイントカード紹介の小型ポスターなど、店内は従業員の手作りが溢れており、アットホームな印象を創造している点が上げられました。
スーパーB社
スーパーB社では、集客を増やすポイントの継続的な改善や個店格差のない高水準なサービスの提供などのために、2か月に一回、覆面調査を実施しています。
B社では「安全・安心・健康・美味しい・楽しい」をモットーに、常にお客様の視点に立ち、生活に寄り添い、地域に貢献する取り組みを続けています。
B社は、時代の変化が急速に変化する現在は、自社の強みだったものが通用しなくなることがあると考えています。
強みを語るのが難しくなってきた中でも、自社にとって「お客様」という財産は変わらないという考え方のもと、固定客の維持拡大のためには、サービス提供に対する意識の改革が必要であり、挨拶、欠品防止、クリンリネス、鮮度アップの徹底という基本こそ一番大切だとしています。
B社では、社外の目で客観的に調査することで、接客の均一化を図ることを目的に覆面調査を導入しました。
覆面調査により、挨拶、欠品防止、クリンリネス、鮮度アップの徹底という4つの基本のチェックを含む多岐にわたるサービスレベルが点数でわかることで、現場への評価もわかりやすく、すべきことも明確になりました
覆面調査の導入前は、店舗ごとのサービスレベルの差に対して現場は無頓着でした。
覆面調査を導入したことで、自店の評価や他店の評価を現場が意識するようになりレベルアップが図られています。
覆面調査を活用した集客を増やすポイントの継続的な改善や個店格差のない高水準なサービスの提供は、B社の重要な施策となっています。
スーパーC社
スーパーC社は、地域で業界トップの売り上げを誇るチェーンストアです。
地元名産品をはじめとする地産地消にも力を入れ、さらに全国からこだわりの品を集めるなどオリジナリティあふれる品揃えで、他のスーパーとは一線を画したスーパーマーケットとして、地元民からも支持されています。
C社は「地域に愛されお客様も社員も楽しい高質ストア」になることを目標に、さまざまな施策を行っています。
なかでも特に注力しているのが、自社の強みでもある「商品」「販売」「鮮度」「接客」「人財」の5つの質を、さらに高めていくための取り組みです。
C社が取り組む「商品」「販売」「鮮度」「接客」「人財」の5つの質の向上とは、言い換えればそれらはすべて顧客満足度(CS)の向上です。
そこでC社では、全店舗にCS委員会を設置し、各店舗で部門にCS課題を共有し、課題解決に向けた取り組み方を、従業員で話し合う場を設けています。
さらにCSマネージャーによる、全店舗の自社チェックを隔月で実施するとともに、覆面調査も導入しています。
挨拶や陳列、接客、レジ・チェッカーなど、細分化された項目を、自社チェックと覆面調査の両側面から分析し、課題解決に向けて会社全体で取り組んでいます。
「同じチェックでも、社内で指摘されることと、覆面調査のチェックでは違った重みがある」と、一連の指揮を取るCSマネージャーは身をもって実感すると語っています。
社内チェックと覆面調査の結果は、店舗の従業員ルームに掲示してあり、誰でも確認できるため、従業員意識向上に変化がありました。
朝礼時の意見交換などでは、以前までは各々の作業に関する報告・連絡が多かったのですが、近年ではチェック内容に関することや、さらにはCSに対することにまで視野を広げて話す機会が増えたと言います。
これは常にCS評価を目にすることで、自ずとCSへの意識が高まり、気持ちが課題解決へ向かっていることになります。
C社では近年、動画による接客マニュアルにも積極的に取り組んでいます。
例えば、開店準備作業の手順やレジ対応など、これまでは紙ベースで共有してきたものを、順次動画に落とし込んで全従業員に共有しています。
なかには、お客様対応のHow toを紹介したロールプレイング動画もあり、テキストを読むだけでは伝わりにくい動作や表情、空気感などが手に取るようにわかるため、従業員からの評判も上々です。
CS向上の取り組みは、従業員満足度(ES)の向上にも直結していると考え、C社では「褒めること」と「チャレンジすること」の促進で、従業員の働く喜びを拡大しています。
「褒めること」として特徴的なのは、各店舗に専用の予算が与えられていることです。
これにより、店舗に寄せられるお客様の声やメールなどで特に賞賛された従業員には、店独自で表彰ができ、記念品も授与できます。また、従業員の誕生日にはプレゼントを用意したり、親睦会を開催したりすることもできます。
「チャレンジすること」の取り組みには、「チャレンジ販売」として、社内の連絡ツールを活用して商品の売り方や販促方法を共有したり、またはそのアイデアを広く募ったりするものがあります。
これは当初、売場の担当社員だけの取り組みでしたが、最近ではパートも参加し、担当以外からも意見が寄せられるようになりました。
駅ナカ店舗D社(地域共生企業)
駅ナカ店舗D社は、駅を利用する多くのお客様に、便利な品揃えと素早く正確な接客を提供してきました。
時代の変遷とともに、駅ナカ店舗は大きく変化し、コンビニエンスストアとの提携、飲食業も加わり、D社は地域を支え活性化を担う必要不可欠な存在として、日々成長し続けています。
お客様に日々直接応対する従業員のモチベーションが上がらなければ、売上にはつながりません。顧客満足を実現するには、店舗運営を支える従業員の満足度を上げる工夫が必要です。
D社は正規雇用者のみならず、店舗に立つ非正規雇用者にも「褒められる」機会を作るシステムづくりに取り組んでいます。
各店舗の店長と連携し、まずは日々の小さな褒めポイントをとりこぼさないようにする「褒める文化」の浸透から着手しました。
さらに、従業員の良い接客応対や、事故の未然防止につながる行動などに着目し、さまざまな取り組み結果によって個々に褒賞する仕組みを作りました。
その結果、従業員の間に笑顔が増え、そのストーリーを全店舗に共有することで意識アップにもつながっています。
D社では、年1回のレクリエーションも全従業員対象で企画されています。
従業員同士のコミュニケーションを円滑にし、従業員の意見を拾い共有するための意見交換会は店長主導で開催しており、他店舗との情報共有にも役立っています。
昇格・賞与・昇給の対象者は、パートも含め明確な評価基準を設定し、従業員の中から選定して支給しますが、金額よりも「選ばれる喜び」が仕事への意欲を高め責任感を育んでいます。
どんなシチュエーションで、どんな応対をすればお客様に気持ちよく買い物していただけるか。
D社ではお客様の満足度を高める施策として、模擬店舗でのロールプレイングでの接客応対を審査・評価する「フロントサービス競技会」を実施しています。
お客様の定着、売上アップにつながる接客スキルを磨くことが目的で、出場を躊躇していた従業員からも、とてもいい経験になった、勉強になった、再認識ができた、といった評価が得られ、さらに各店舗の団結力を高める効果もみられました。
また、キーワードを基に各店舗が目標を設定し、日々の接客で実践する取り組みも実施しています。
接客スキルが売上を左右するともいえる販売業において、自前で接客診断をする企業は少なくありません。
D社も自社幹部による接客診断を実施してきましたが、幹部による評価に従業員が身構えていつもの接客ができない、幹部の見知った従業員だけが高評価を得るなど、公平性に欠けるところに課題がありました。
「どうせ自分は見てもらえないだろう」と店舗従業員の士気が下がることもあり、まず必要なのは、第三者の客観的で公平な視点からの評価・問題提起だと考え、覆面調査導入に踏み切りました。
覆面調査会社は、同業他社を多く扱っているので、その数多い評価に基づく診断項目によって正当な評価が得られるというメリットがあります。
診断員がいつ来店したか、従業員には全く分からないため、日頃の正直な接客態度が評価され、それが従業員の競争心に火を付け、地位向上のモチベーションにもなっています。
D社では覆面調査の報告会を実施し、調査結果の内容を各店舗と共有し改善点を洗い出すことで、従業員の意識改革に役立てています。
調査の評価報告書をもとに自己診断・相互診断をするなど、従業員の自主的な取り組みも見られるようになっています。
まとめ
今回はお客様が喜ぶ接客の具体例と、実際に成功している店舗や企業の施策を紹介しました。
お客様が喜ぶ接客は、きちんとした身だしなみ、笑顔、挨拶、丁寧な言葉づかいが基本となります。
お客様が喜ぶ接客が成功している店舗や企業に共通するのは、お客様を接客する従業員の満足度を高める施策を取り入れている点と、接客の現状を把握する施策を実施し、継続した改善に努めている点です。
客観的に接客の現状を把握する施策として覆面調査があります。
覆面調査で把握した結果をもとに、改善を継続することで最良の接客に近づくことが期待できるでしょう。
著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。