お客様のニーズを引き出す会話術
目次
営業成績が伸び悩んでいる営業担当者の多くが直面する課題の一つに、「お客様の本当の要望が見えない」という問題があります。商品やサービスを一生懸命説明しても、なかなか成約に結びつかない、そんな経験はありませんか?
成約率を高めるには、お客様が商品やサービスに求める「ニーズ(欲求)」を把握することが重要です。ニーズはその商品・サービスを購入する理由になるもので、これを明らかにしなければ的確な提案を行うことはできません。お客様のニーズを正確に把握し、本質的な欲求を引き出す会話とはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、お客様のニーズを引き出すために営業担当が押さえておきたい会話テクニックを紹介します。
潜在ニーズを引き出す重要性

お客様のニーズは必ずしも表面化されているとは限りません。本人が自覚していないニーズを「潜在ニーズ」といい、ビジネスにおいてはお客様の潜在ニーズを明らかにすることで営業や商談を有利に進められます。
まず、ニーズの種類を整理しましょう。
顕在ニーズ(表面的なニーズ)
• お客様が既に自覚している要望
• 「コストを下げたい」「効率を上げたい」など
• 競合他社も容易に把握できる
• 価格競争に陥りやすい
潜在ニーズ(根本的なニーズ)
• お客様が無意識に抱えている本質的な課題
• 会話を通じて初めて浮かび上がってくる
• 競合との差別化ポイントになる
• 高い顧客満足度と信頼関係の構築につながる
なぜ潜在ニーズが重要となるのか、その理由として以下の点が挙げられます。
顧客満足度が向上する
本人が自覚している「顕在ニーズ」は企業側も容易に把握できますが、自覚のない潜在ニーズは会話を通じてお客様から引き出さなければなりません。本人は気づいていなくても、潜在ニーズの根底には「欲求」があります。これを満たすことができれば、顕在ニーズのみに応えるよりも顧客満足度が向上し、成約率を高められます。隠れたニーズにも応えられる営業担当はお客様から信頼され、良きパートナーとして良好な関係を維持できるでしょう。
新たなビジネスチャンスにつながる
他社との顧客獲得競争が激化するなか、すでに表面化されたニーズに応えるだけでは差別化を図ることはできません。
競争が激しい市場では、限られた顧客を奪い合う状況になりがちです。
しかし、お客様自身も自覚していない潜在ニーズを引き出し、それを満たす提案ができれば、他社にはない価値を提供でき、新たなビジネスチャンスの創出につながります。
ビジネスを発展させるためには、目の前にあるニーズだけでなく、他社が気づいていないニーズも捉えることが重要です。
押さえておくべき基本の会話術
まずは営業担当が押さえておくべき基本の会話術を紹介します。お客様のニーズを引き出すには両者の信頼関係と円滑なコミュニケーションが前提となります。
営業トークの流れ
お客様への営業トークは次のような流れで展開します。
1. 挨拶
2. 雑談(アイスブレイク)
3. ヒアリング
4. 提案
5. クロージング
本格的な営業トークに入る前に、まずは挨拶と雑談で場を和ませてお客様が話しやすい雰囲気をつくります。ヒアリングではお客様の話に耳を傾け、現状と理想の間にあるギャップを明らかにし、本人も自覚していない隠れたニーズを引き出します。ヒアリングの質が高ければお客様のニーズに合致する提案ができ、成約率を高められます。
話し方を合わせる「ペーシング」
ペーシングとは、自分の話し方や行動を相手のペースに合わせることで、短時間で信頼関係を構築するコミュニケーション技法です。具体的には、声のトーンや大きさ、話す速度、表情などの非言語的な要素を、相手に合わせて自ら調節するスキルを指します。相手に同調する姿勢は「話を理解している・共感している」ことを示すことができます。
もともとはカウンセリングの手法として用いられていましたが、相手との信頼関係を深めるコミュニケーションはビジネスにおいても有用であり、営業や商談、マネジメントなどで広く活用されています。
結論から話す「PREP法」
PREP法とは文章構成モデルの一つであり、以下の英単語の頭文字を取っています。
• Point(結論):最も伝えたいことを最初に述べる
• Reason(理由):なぜそう言えるのかの根拠
• Example(具体例):理解を深める事例や数値
• Point(結論):改めて結論を伝え、印象を強める
PREP法の特徴は、最も主張したい「結論」から話し始めることです。これにより話の要点が明確になるとともに、結論の後に理由と具体例を続ける論理的な展開で説得力が高まり、受け手はストレスなく話を聞くことができます。
営業トークでは短い時間で意見や提案を明確に伝える必要があります。PREP法を意識することで「結局何が言いたいのか」「つまりどういうことなのか」と聞き返されることがなくなり、不要なやりとりを減らせるでしょう。
お客様のニーズを引き出す会話テクニック
自覚のない潜在ニーズを引き出せる営業担当は、長期にわたってお客様との良好な関係を築くことができます。お客様のニーズを引き出すためには何を心がければよいのか、営業担当が身につけたい会話テクニックを紹介します。
まずは「クローズド・クエスチョン」
クローズド・クエスチョン(限定質問)とは回答を限定した質問形式のことで、受け手が「はい」か「いいえ」、または提示した選択肢から答えられる質問を指します。例えば「この機能は必要ですか」「どちらの色がお好みですか」というような質問がクローズド・クエスチョンにあたります。回答を考える負担が少ないことや相手の決断を促せることから、アイスブレイクやクロージング時に向いている質問形式といえます。
ただし、クローズド・クエスチョンを繰り返すと誘導尋問のように捉えられ、かえって相手に負担をかけてしまうおそれがあります。営業トークにおいて回答しやすい限定質問を最初に持ってくるのは効果的ですが、あまり多用しすぎないように注意しましょう。
情報を引き出す「オープン・クエスチョン」
オープン・クエスチョン(拡大質問)とは回答を限定しない質問形式のことで、受け手が自由に答えられる質問を指します。クローズド・クエスチョンよりも会話を広げやすく、お客様の状況や要望など多くの情報を引き出すことが可能で、質問を通じて表面化されていないニーズを掘り下げることができます。
一方で、お客様にとっては回答を考える心理的負担が大きく、営業担当との関係が希薄な場合には本音を言ってもらえない可能性があります。ニーズを引き出すためには「この人になら話してもいいな」と思ってもらえるような信頼関係を構築し、お客様がリラックスして話せる雰囲気をつくることが大切です。
反論まず受け入れる「イエス・アンド法」
イエス・アンド法とは、相手の意見を受け入れた後に、自分の提案を付け加える手法です。一度「イエス(はい/そうですね)」で相手の意見を尊重する姿勢を見せたうえで、それに付加する形で「それなら」「実は」と自分の意見を主張します。
反論の手法としては「イエス・バット法」も知られていますが、相手の意見を受け入れているとはいえ、すぐに「バット(しかし/けれども)」と続けるのはネガティブな印象を与えかねません。一方、イエス・アンド法では相手の考えに寄り添いつつ、否定的な言葉を使わずに切り返せるため、相手に提案を聞いてもらいやすくなります。
相手への理解を示す「バックトラッキング」
バックトラッキングとは相手の言葉を繰り返す「オウム返し」のことです。特に初対面の相手に有効な手法で、言葉を適切に反復されることで受け手は「理解されている」「受け入れられている」と感じます。心理学においては信頼関係を構築するためのコミュニケーションスキルとされており、お客様との営業トークに取り入れることで相手に安心感を与え、相手からの信頼も得ることができます。
ただし、バックトラッキングは機械的な面があり、多用しすぎると相手に不信感を与えてしまう可能性があります。相手の反応を観察しながら、理解や共感を示すべきポイントで用いるのが効果的です。
ニーズが浮かび上がる「現状と理想のギャップ」
お客様が自覚していない潜在ニーズは現状と理想の間にある「ギャップ」に隠れており、これを明らかにすることでニーズが浮かび上がってきます。ここまで紹介したテクニックで相手との関係性が深まったら、以下の流れで相手のニーズを深掘りしていきましょう。
1. 今の状態を確認する
2. 現状を踏まえた理想(未来のあるべき姿)を確認する
3. 現状と理想のギャップを確認する
本音を引き出すにはお客様との信頼関係が前提となります。信頼のない相手に本音を話すことはなく、質問を重ねても本当のニーズを明らかにすることはできません。また、早い段階からニーズを把握できたとしても、相手の話を遮らずに最後までしっかりと聴くことが大切です。
お客様との信頼関係を築く「傾聴力」

お客様とのコミュニケーションにおいては「話す」こと以上に「聴く」ことが重要となり、営業担当の聴く姿勢は相互の信頼関係に大きく影響します。相手のニーズを引き出すためには単に話を聞くだけでなく、共感と理解を示しながら言葉の意図を読み取る「傾聴力」が必要です。
積極的傾聴(アクティブリスニング)[MOU1.1]を提唱したアメリカの心理学者カール・ロジャーズ氏は、傾聴に必要な要素として次の3点を挙げています。
1. 共感的理解:相手の立場になって共感・理解しようとすること
2. 無条件の肯定的関心:相手の話を否定せずに肯定的な関心を持って聴くこと
3. 自己一致:自分の気持ちと相手に対する言動が一致していること
傾聴は相手に寄り添うコミュニケーションですが、話の内容がわかりにくい場合はそのままにせず、「これはこういうことですか」「もう一度よろしいですか」と聴きなおして真意を確認しましょう。相手だけでなく、自分に対しても真摯な姿勢で聴くことが大切です。
まとめ
ビジネスにおけるニーズは「欲求」を指し、現状と理想のギャップを明らかにすることで本質的なニーズが浮かび上がります。お客様のニーズを引き出すためには、両者の間に信頼関係があることを前提に、質問の仕方を工夫する必要があります。
他社との差別化を図るうえでも、すでに表面化されたニーズだけでなく、お客様が自覚していないニーズに応えていくことが重要となります。会話を通じて隠れたニーズを引き出し、的確な提案でそれを満たすことができれば、自ずと成約率は高まるでしょう。
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著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。