「ドン・キホーテ」調査結果 【無料資料ダウンロード】
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)は、ミステリーショッピングのプロ集団であり、店頭のリアルな実態と、それが顧客の感情、再来店の意向に与える印象などを調査・分析するスペシャリスト集団です。ARCスタッフ、調査員が好調企業の“店頭の実態=FACT”を調査し、それが顧客の「また来たい」という印象(私たちはこれを『再来店動機』と呼んでいます)に与える要因を解析するのがこの連載です。分析を通じて好調企業が支持される要因を導き出し、多くの小売業、チェーンストアの皆さんにお客さまの “琴線に触れるポイント”“また来たいと思ってもらえる勘どころ”を伝えたいと考えています。
今回は、衣食住全てを扱う総合業態の「ドン・キホーテ」をウォッチしてみました。
復活したインバウンド消費 その変化にも的確に対応
ドン・キホーテを傘下に運営するのはパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(P.P.I.H.)で、国内にはドン・キホーテなどのディスカウントストア486店舗、GMS131店舗の計617店を有します。海外105店舗を加えた売上高は1兆9368円となり、有数の総合フォーマットです(2023年6月期)。私たちは10月に、ディスカウント業態とされるドン・キホーテをリサーチしています。
目立つのは訪日外国人のインバウンド消費を積極的に獲得する姿勢でした。訪日外国人は2023年10月には251万人とコロナ前の水準を超えていてP.P.I.H.の免税売上高は直近で211億円、既存店売上高を7.3%押し上げたということです(2023年9月末の第1四半期)。実際、店頭では『入口の免税のポスターが大きく分かり易く目立って買う気満々の購買意欲を駆り立てられる/フロアマップは多言語表記。
日本語の他、英語、韓国語、中国語に対応/天井には「Welcome」「Every Day Cheap」の吊るし看板が目立ち歓迎感が伝わり、価格も安い事がアピールされワクワク感が出る工夫がされている/外国人でも買いやすいようにサプリメントの説明を英語で詳しく説明』など外国人客が買物をしやすい環境をしっかり作っていました(『』内は調査員レポート)。接客応対も的確で『妙齢の女性店員も外国人に「MARUCHAN?」と聞かれていて「セカンドフロアー」と答えていて、「アリガトウゴザイマス」と言われていてほっこりした』といった声もありました。
実はコロナ前のインバウンドと異なるのは中国人客の激減です。2023年では中国人客が△76.2%と激減に対して増加したのが韓国、シンガポールなどのアジア、アメリカ、オーストラリアなどの国です。この変化をドン・キホーテはきちんと把握していて『「あなたの国ではこれが人気です」の表示と陳列によってお土産が選びやすくなる工夫がされている。
しかもターゲット国が幅広い(アメリカ、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、インドネシア)』と対応していました。中国人客の減にも対応し炊飯器は4,980円と安く『学生一人暮らしの味方。逆にインバウンドは高級炊飯器の方が良いと思うが最も高い炊飯器でも40,000円前後の商品しかなかった→中国人の爆買いブームは去った?』という的確な商品選定です。
生活者に支持されるPB ネーミングは科学的に設定
インバウンド一色でない“日常の生活者にも対応”するが今のドン・キホーテの特色です。調査スタッフからは『生魚の種類も多く、旬の魚がボリューミーに陳列されていて思わず手に取りたくなった(例えばカキやあんこうが、このボリュームでこの価格は、他のスーパーではあまり見られない価格だと感じた。ドン・キホーテというイメージからは想像できない新鮮な魚介類が購入できる店舗)』という声もありました。
日常の生活者のニーズを吸収しているのが“ド”マークで知られるプライベートブランド(PB)の数々です。
『改めて店内を回ると、こんなところにも「ド」商品!という新たな発見も多かった。→寝具、紙コップ、ステンレスマグ、おだし、もずくやちくわ、炭酸水、グルテンフリーのパンケーキミックスまで!』ですし、自宅にも『気がつけば家にドンキ商品が沢山あって我が家にさり気なく入り込んでいた。家にあるという事は他社と比較して安いという事になる』という驚きの声もあります。魅力はもちろん価格で『ノンオイルタイプのツナ缶が10個入りパックで798円!1缶あたり80円弱。この安さは絶対に買いたくなってしまう』と感じました。
ただし“激安”かというとそうでもなくて『全体的に、たしかに少し安価ではあるが、容量などで割ってみると、そこまで超激安ということもない→あまり安すぎても、生産地など不安になるが、無添加などこだわるところはしっかりこだわり、個包装を減らすことでコストを下げるなど、購入者側が安心できる価格設定だと感じる』といった買物客の視点コメントもあります。既述のツナ缶などは『詳しい説明がかかれたパッケージを開けると、何も書かれていないシルバーの缶。こういうところで価格を下げる努力が見られる。実際に食べてみると、とてもおいしく、普段使っているものと大きく変わらない』点も支持される理由なのでしょう。
PBの特徴はそのネーミング、品質へのこだわりの表現方法です。菓子の『信州赤系米味噌茄子スナック→インスタントの揚げなすみそ汁をそのままかじったら、あれ、いける??担当者の遊び心がいつしか本気になり5年の歳月・・・マルコメさんの協力でなすの美味しさを引き出す信州赤系米みそを発見!サクサクカリカリ♪を追い求め103回たべてついに見つけたバランス!なすってこんなにおいしかった?なすがますます旨いなすスナックです(156文字)』と驚きの長さの商品説明や『きのこMIX松茸の香り→松茸の気配がするのにきみはそのかたちをしていない。食べているものと香りが違う!?頭が混乱しそうなきのこスナック。仲間たちの姿を借り、あのきのこの王者。「松茸の香り」ここい降臨。きのこミックススナック(※この商品に松茸は入っておりません)』などが一例でしょう。
PBのパッケージは『「中身がイメージできる」という点が大きなポイント』で、また商品説明の表現は『オノマトペ(擬音語)を使う(ドーン、ドバドバ、すぃーっと)→オノマトペは直感的にわかりやすくなったり、記憶や印象に残りやすくなる。ビジネスシーンにおいては購買意欲を高める効果がある』と深い研究がなされていることも分かります。ドン・キホーテはPB商品へのダメ出しも顧客に求めていて楽しく商品開発を進めている印象もありますし『開発側の愛情が感じられる』という意見もありました。
本当のオリジナル、これまで世の中になかった商品が人気になり、訪日外国人だけでない生活者の繰り返しの購買につながっていることが分かります。
他社にない商品だけでなく、その価格表示も支持されていて『価格のわからない商品は一切無く、POPを見ればどんな商品かすぐにわかるし、覚えやすい→天井からの価格表示で見やすい』のコメントもあります。
ドン・キホーテのPOPも他社にはないオリジナルです。
全国の全都道府県に出店しているドン・キホーテ。スーパーマーケットなど既存業態からすればインバウンドに強い“異質”な存在だったかもしれませんが、実は商品もおいしいものが多いし、表示なども的確です。接客も『レジスタッフはテキパキしつつも、「袋、どうします?」と笑顔でしっかり確認するなど、基本に忠実でありながら、明るく活気のある店内印象を最後まで守っていた』という評価もあります。
ドン・キホーテはかなり基本に忠実な、全ての店舗にとって“手強い存在”という印象が強まったリサーチの結果でした。
詳細な調査結果は「優秀チェーン7つのエクセレント」を下記よりダウンロードして頂けます。
ぜひダウンロードしてご覧くださいませ。
著者プロフィール
三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる
長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。
実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員