「スギ薬局」調査結果 【無料資料ダウンロード】
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)は、ミステリーショッピングのプロ集団であり、店頭のリアルな実態と、それが顧客の感情、再来店の意向に与える印象などを調査・分析するスペシャリスト集団です。ARCのスタッフ、調査員が好調企業の“店頭の実態=FACT”を調査し、それが顧客の「また来たい」という印象(これを私たちは『再来店動機』と呼んでいます)に与える要因をお伝えするのがこの連載です。
23回目を数える今回は、スギ薬局の調査結果となります。スギ薬局はスギホールディングス傘下で最大の事業会社で、国内に1666店舗を有するドラッグストアチェーンです(2025年2月期、その他の事業会社を含めるとホールディングス全社で2186店舗)。調剤にも力を入れておりスギ薬局の調剤併設の店舗は79.9%と8割にものぼります。
スギ薬局の売上構成比は調剤22.6%、ヘルスケア19.3%、ビューティ18.6%、ホーム18.5%、フーズ20.9%。驚くほどバランスよく売上げを獲得していることが分かります。
今回はこのスギ薬局の店頭をエイジスリサーチのスタッフが調査をしてきました(調査は4~5月実施、価格などは調査時)。
エスセレクトのPBの多さ 機能の分かりやすさに驚き
店内に入って調査スタッフが最初に驚いたのはそのオリジナル商品の豊富さでした。多くが“エスセレクト”のブランドがついたプライベートブランド(PB)商品で『サランラップ、トイレタリー、整髪料、化粧品、スキンケア、サプリメント、栄養ドリンク、市販薬、風邪薬、食品(ごはん、ウィンナー、ハム)、牛乳、お菓子類、おつまみ系、消毒液、包帯、洗剤など非常に幅広い。商品は多岐にわたり、今まであまり気にしていなっかったが種類の多さに驚いた』(『』内は別紙、ダウンロード用調査レポートから抜粋、以下同)という声がありました。
例えば食品では『エスセレクト キューブチョコ(税込149円)⇒「食物繊維入り」というパッケージに興味がわいた。“スギ薬局管理栄養士おすすめ”というロゴもあってちょっと罪悪感が薄れる。味は美味しかった。小袋だが、チャックがついているところがとてもよく、カバンの中にポンと入れられるのでよかった』ということで、ヘルシーイメージのドラッグストアらしい商品が支持されたようです。
生活用品では『エスセレクト「激落ち オレンジオイル 超厚ウェットシート(税込217円)」⇒オレンジオイル配合なので、良く落ちる。コンロをさっと拭いただけでも綺麗になって、2度拭きもいらなかった。油汚れだけでなく、机なども拭いたがベタベタすることなくさっぱりとして良かった。激落ちくんだともう少し高いと思うが、コスパも◎』と高い機能が喜ばれました。『エスセレクト「フリーザーバッグ」⇒ジップロックよりは少し薄いが、使用感に問題はなかった。大きさはジップロックより少し大きいため、物の出し入れがしやすいと思った。サイズが豊富で価格も安いため、遠慮せず使えると思った』と物価上昇のこの時代に、価格と品質のバランスも良かったようです。
ドラッグストアらしく医薬品のPBも多くあります。例えばネーミングひとつをとって見ても『PBの医薬品は商品名だけだと性能がわかりづらいので、サブタイトルで“何の悩み効果があるのか”パッと見てすぐ用途が明確に伝わり選ぶのがラクになる工夫がされている。買物中の“時短”につながるが助かる。<つらい湿疹、皮膚炎、かゆみに ベタメゾンSG軟膏/かぜなどで弱った体に、熱によるだるさ 新ハリーゴールド液/肌あれ・にきび リボナミンLCプラス/自然治癒力を高めてキズを早くきれいに治す 薄型うるおいパッド(絆創膏)>⇒パッと見てすぐ用途が分かると、選ぶのがラク。迷わず済むから、買物ストレスが減る!』と良く工夫された商品設計やネーミングがストレスなく簡単に買物ができる商品であることを評価するコメントもありました。
売場はPBとNBを比較併売 “同じ品質なら安く”を実現
PBの売り方はナショナルブランド(NB)商品と併売している例が多く、これもチェーンストアの原則通りでした。『他社のNB商品との隣り合わせの横並び陳列、併売で同じ品質のPB商品のお得感を演出しているのが上手いと思った。⇒エスセレクト「ベビーオイル 300ml」580円/ピジョン「ベビーミルクローション 300ml」987円、エスセレクト「バリダリン 40錠」547円/ライオン「バファリン 100錠」1408円など』で、“同じ品質ならばより安く”のルール通りの販売方法です。
驚きはその価格差で例えば『エスセレクト「肌あれ・にきび・口内炎にナチュラBB(140錠)」(税込1,188円)⇒口内炎に悩んでいるのでサプリメントを探していたが薬剤師からおすすめされたので購入。口内炎予防としてビタミンB2が良いとの事。サプリメントよりも濃度が高く効果がある医薬品の方がおすすめと言う事だった。ほとんど同じ成分でエーザイから「チョコラBB」が出ているが値段は2,948円(税込み)とエスセレクトよりも倍以上の値段で驚いた』という声もありました。価格差もさながら、薬剤師による専門的な接客も加わって安心して買物ができたようです。
売場づくりでは“統一感”がキーワードでした。
『価格表示に統一感があった(標準化され、洗練されたイメージ①)⇒通常価格=白/お買い得=黄色/EDLP=「毎日がお買い得!」/期間限定「期間特売」/まとめ買い「まとめ買いがお得!」/PB「エスセレクト」⇒商品の大きさに合わせ、POPの大きさを合わせているので、価格がわかりやすい』という声や、『店内売場案内の統一感があった(標準化され、洗練されたイメージ➁)⇒定番=250~270cm程度高さ、通路に通路番号と各サイド2種の代表商品群を表示/壁面=300cm程度高さ、代表品名を1種大きく表示 ※例:「くすり」「大人おむつ」「トイレットペーパー」』といったコメントがありました。
筆者もいつもスギ薬局が秀逸だと思うのは売場表示で『棚よりも高い位置に売場案内があるので、遠くからでも、探している売場がわかりやすい』は全く同感です。
関連陳列に対する『高齢者向け介護食の近くには高齢者向けスプーンやお箸が連動していたり、アルコール売場の近くにおつまみ系のスナックが連動陳列され思わず手が伸びてしまう仕掛けでクロスセルしやすい工夫がされていた』といった気づきや、サンプル陳列での『歯ブラシの先端のサンプルが展示されていて悩み別に比較しやすく選びやすい』などの声もありました。
ドラッグストアは細かな商品、機能が分かりにくい商品なども多いのですが、スギ薬局にはそういった“不満”“負担”をなくす工夫がたくさんあったようです。
専門性高い薬剤師の接客+原則通りのレジ接客を徹底
接客は『薬剤師に「口内炎が出来やすい」と相談をすると「どのくらいの頻度で出来る感じですか?」と聞き取りがあった。第二類の医薬品を紹介してくれサプリメントとの違いやコスパが良いスギセレクト「ナチュラBB」を一緒に選んでくれこちらに寄り添った接客だったと思った』という専門的な応対はもちろんよかったようです。加えてレジでも『初めの挨拶時に両手を重ね合わせてお辞儀をして「いらっしゃいませ」と出迎えてくれた。医薬品を購入したので「お薬で分からない事はありませんか?」と確認があった。ポイントの所持確認があり「有難うございました」と最後の挨拶もしっかりと発声し気持ちが良い接客だった。次回購入時の使える割引券がついているチラシを渡してくれてまた来ようと思えるような工夫がされていた』と原則通りです。
レジにはコロナ禍以降、『レジにはビニールのパーテーションが間にあった。パーテーションを利用して、インフォメーションが多く掲示してあってレジ待ち時に見られた』とありました。スギ薬局で継続して続けられている『昭和の匂いを感じるチラシ配布は、高齢者の対応などでは良いと感じた。今後も続けて欲しい』という声もありました。『レジ脇にエスセレクトの人気NO1の日焼け止めが陳列されており、ついで買いをしそうな展開となっている』という点も“もう1品”の工夫があったようです。
冒頭に述べたようにスギ薬局の売上構成比は驚くほどバランスがとれています。これはドラッグストアらしい専門性を生かした商品設計と“PBづくり”、買物がしやすい表示、安さを感じられる併売を徹底した“売場づくり”、専門性を生かした薬剤師とレジを中心にしたセルフサービスらしい“接客”がバランスよく実現された結果のように感じました。
今回の店頭リサーチではこうしたチェーンストアの原理原則を極めて緻密に実行しているスギ薬局の姿が見られました。
詳細な調査結果は「優秀チェーン7つのエクセレント」を下記よりダウンロードしていただけます。
ぜひダウンロードしてご覧くださいませ。
著者プロフィール
三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる
長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。
実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員