パート・アルバイトが辞める理由~定着率を高める対策とは ?

コラム

企業や店舗にとってパート・アルバイトは重要な人材です。

 

特に近年人材不足が深刻になっている日本において、パート・アルバイトの活用は大きな解決策となることが期待されています。

 

パート・アルバイトの人材確保で課題となるのが、定着率です。
パート・アルバイトの定着が思うようにいかず、悩んでいる経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、パート・アルバイトの定着率の現状を踏まえ、パート・アルバイトが辞める理由と定着率を高める対策について解説します。

 

定着率・離職率とは

企業や店舗の定着率に注目していくことは、業務を順調に継続していくために重要です。
基本的なことですが、定着率・離職率についておさらいしておきましょう。

 

離職率は以下の計算式で計算します。

離職率(%):離職者数÷年初の従業員数×100

 

たとえば、年初100名の従業員数の企業で、一年間に退職した人数が10名だったとしましょう。

離職率(%):離職者数10名÷年初の従業員数100名×100(%)=10(%)

この場合離職率は10%となります。

 

一方、定着率は100%から離職率を引いた割合になります。

年初100名の従業員数の企業で、一年間に退職した人数が10名だった場合、

定着率(%):100(%)-離職率10(%)=90%

となり、定着率は90%になるわけです。

 

当然、定着率が高いと離職率が低いということになります。

 

パート・アルバイトの離職状況

企業や店舗の定着率を考えるとき、一般的にはどのくらい定着率があるのかを知っておく必要があるでしょう。

厚生労働省が毎年公示する「雇用動向調査結果の概要」をみると、パートタイム労働者の離職率を確認することができます。

 

引用元: 令和2年雇用動向調査結果の概要

 

令和2年雇用動向調査結果の概要によると、令和2年度のパートタイム労働者の離職率は、23.3%になっています。

 

したがって、単純に100%から離職率を引くと、定着率は76.7%になります。
あくまで概算になりますが、100名のパート・アルバイトがいたとすると年間で約23名が辞め、約77名が残るという計算になります。

 

23.3%(76.6%)という離職率(定着率)をどのようにとらえるかは、各企業や店舗によって考え方は違うと思いますが、一般の労働者の離職率が10.7%ですので、2倍以上離職率が高いことになります。

 

令和2年雇用動向調査結果の概要の統計をみると入職率も記載されています。

入職率は以下の計算式で計算されます。

入職率(%):入職者数÷年初の従業員数×100

 

令和2年雇用動向調査結果の概要によると、令和2年度のパートタイム労働者の入職率は、22.2%になっています。

離職率は、23.3%になっていましたので、入職率は離職率を下回っています。
あくまで、数値の比較になりますが、令和2年度は入職よりも離職が多かった年だったといえるでしょう。

 

一般労働者はどうだったかというと、入職率が10.7%、離職率が10.7%となり、入職と離職が同じでプラスマイナスゼロの年だったといえるでしょう。

 

令和2年雇用動向調査結果の概要のデータから、一般的にパート・アルバイトの定着率は8割弱で、一般社員よりもパート・アルバイトはやめる可能性が高いことが推測されるでしょう。

 

常時100名のパート・アルバイト人員が必要な場合は、常に複数名のパート・アルバイトを採用していかないと業務が回らない可能性があるといえるのではないでしょうか。

 

このようにパート・アルバイトの人員を確保していくことは難しいことが分かります。
パート・アルバイトの人員確保が前提となって、ビジネスが回転していく企業や店舗はもちろん、人手不足の現状をパート・アルバイトの有効活用で補っていこうと考えている企業や店舗にとって、定着率を高めることは重要な課題であることが分かります。

 

パート・アルバイトが辞める理由

厚生労働省が毎年公示する「雇用動向調査結果の概要」では、転職入職者が前職を辞めた理由についてまとめています。
このデータは、パート・アルバイト以外の転職入職者を含んでいますが傾向は参考になると思います。

 

引用元: 令和2年雇用動向調査結果の概要

 

この章では令和2年雇用動向調査結果の概要のデータを参考にパート・アルバイトが辞める理由を考えてみたいと思います。

 

●労働条件が悪い
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」年齢別で学生のアルバイトに該当すると思われる19歳以下・20~24歳の男女および、パートに該当すると思われる女性全年齢層において、転職入職者が前職を辞めた理由の上位に「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」という理由が上がっているのが分かります。

 

学生のアルバイトの場合本業である学業との調整がつかない場合退職に結びつくでしょう。
たとえば、アルバイトを始めてみたが、学業との両立がうまくいかないといったケースです。

大学においても学業優先の考え方が厳格化しており、学生が講義に出席しない場合は試験を受けられなくなるなど、学業を優先していかないと、単位がとれなくなる傾向が強くなっているようです 。

 

●人間関係がうまくいかない
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」年齢別で学生のアルバイトに該当すると思われる19歳以下・20~24歳の男女および、パートに該当すると思われる女性全年齢層において、転職入職者が前職を辞めた理由の上位に「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由が上がっていました。

 

パート・アルバイトを数多く雇ってローテーションを回している企業や店舗の場合は、同じメンバーではなく、当日初めて会うことも珍しくないでしょう。
初対面のメンバーとうまく対応できない場合は退職に結びつくことが想定されます。
また、既存のメンバーの中に新しく新人が入ってきた場合も、うまくメンバーの中になじんでいく事ができず退職になるケースも考えられます。

 

職場環境がパート・アルバイトの人材を受け入れる風土ではない場合も、定着率は低くなるでしょう。
たとえば、内勤職員とパート・アルバイトが同じ職場で働く場合、パート・アルバイトが引け目や疎外感を感じさせるような職場環境などです。

 

●賃金が安い
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」年齢別で学生のアルバイトに該当すると思われる19歳以下・20~24歳の男女および、パートに該当すると思われる女性全年齢層において、転職入職者が前職を辞めた理由の上位に「給料等収入が少なかった」という理由が上がっていました。

 

パート・アルバイトの多くはいわゆるパート代やアルバイト代といった賃金を求めて仕事を行っていることが多いので、賃金が自分の欲しい金額よりの安い場合は、今の仕事をやめて、他の仕事を探すという選択の可能性が高くなるでしょう。

 

定着率を高める対策

厚生労働省のホームページで は人材確保対策として、

目指しませんか? 「働きやすい・働きがいのある職場づくり」という資料を掲載しています。
資料では、従業員がうまく定着せず、意欲も上がらず悩んでいる事業主に向け解決策を提示しているものです。

 

資料では、従業員の「働きがい」や「働きやすさ」の意識を高めると、働く意欲が向上し、定着率が向上し、結果的に企業の業績が向上する効果があることが、調査で明らかになったと記載されています。

 

そこでこの章では、厚生労働省の資料を参考に、パート・アルバイトの定着率を高める対策を考えてみたいと思います。

 

●採用時にきちんと話す
パート・アルバイトが辞めてしまう理由に、「採用時に聞いていた話と、実際に働いてみた内容が違う」「そもそも話自体も聞いていなかった」など、採用時にきちんとした説明を受けていなかったという内容があります。
この場合、早期退職になることが多く、採用時には必要な項目をきちんと話す必要があることが対策になります。

 

では、必要な項目としてどのような話をしていくべきでしょうか。
厚生労働省の資料には、一般的に休暇、労働時間、給与額などの労働条件が良好な企業が「働きがい」意識が高く定着率が高いことが記載されています。

したがって、休暇、労働時間、給与額などの労働条件については、あいまいにせずに、必ず明確に伝えるようにすべきでしょう。

 

●コミュニケーションを欠かさない
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」年齢別で学生のアルバイトに該当すると思われる19歳以下・20~24歳の男女および、パートに該当すると思われる女性全年齢層において、転職入職者が前職を辞めた理由の上位に「職場の人間関係が好ましくなかった」という理由が上がっていました。
良好な人間関係を構築するためにはコミュニケーションを欠かさないことでしょう。

 

パート・アルバイトを数多く雇ってローテーションを回している企業や店舗は、メンバー同士が当日初めて会うことも珍しくないので、初対面のメンバーとうまく対応できるように、上席が紹介の場を設けたり、チーム構成で何回か一緒に仕事をしたメンバーで業務を回すなどの考慮を行いましょう 。

 

既存のメンバーの中に新しく新人が入る場合は、新人がうまくメンバーの中になじんでいけるように上席がサポートすることも重要です。

 

●妥当性のある賃金
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」年齢別で学生のアルバイトに該当すると思われる19歳以下・20~24歳の男女および、パートに該当すると思われる女性全年齢層において、転職入職者が前職を辞めた理由の上位に「給料等収入が少なかった」という理由が上がっていました。

 

職場のあるエリアやパート・アルバイトを募集している他の企業や店舗の賃金水準よりも同等かより高い給与を支払うことができれば最良の対策となるでしょう。

他の企業や店舗の賃金水準に対抗できない場合は、スキルと経験に合わせた昇給や昇格の制度などを整備して、将来的にステップアップが可能なことを明確に伝えられるようにしましょう 。

 

●ローテーションに気を配る
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概要」年齢別で学生のアルバイトに該当すると思われる19歳以下・20~24歳の男女および、パートに該当すると思われる女性全年齢層において、転職入職者が前職を辞めた理由の上位に「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」という理由が上がっていました。

労働時間の調整がつかないため退職に至るケースを予防する対策に、ローテーションに気を配る取り組みがあります。

 

学生のアルバイトの場合、大学の講義の予定に合わせてローテーションを調整したり、テストなどのために比較的長い期間休まなければならない場合は、主婦のパートやフリーター中心にローテーションを予定して計画を立てるようにします 。

 

主婦のパートの場合は、子どもの関係や親の介護などの都合を考慮してローテーションを調整するなどの取り組みをします。

 

また、いずれの場合も、パート・アルバイトが気後れすることなく、ローテーション調整についてマネージャーなどに相談できる環境を整えておくことも重要でしょう。

 

●職場環境を改善する
職場環境がパート・アルバイトの人材を受け入れる風土ではない場合も、定着率は低くなりますので改善が必要です。

 

採用時には気づかなかったが、いざ職場に来てみると、オフィスや店舗が想像以上に汚れていたり、照明が暗い、空調が良くない、室温調整が良好でない、騒音がうるさいなど、パート・アルバイトが働く現場の環境が悪い場合も退職の原因になります。
対応が困難な場合を除き、清潔感のある職場を保つように、清掃や整理整頓を心掛けましょう 。

 

また、社内風土も初期場環境のひとつといえるでしょう。
たとえば、内勤職員とパート・アルバイトが同じ職場で働く場合、パート・アルバイトが引け目や疎外感を感じさせるような職場環境は、退職の可能性が高まります。
上席は職場風土改善に気を配り、社内イベントなどが開催される場合は招待するようにしていきましょう 。

 

さらに、ハラスメントは職場であってはならないことですので、ハラスメント防止に向けた組織の方針やルールを周知徹底する必要があるでしょう 。

 

まとめ

人材不足が深刻化する中、パート・アルバイトの人材は企業や店舗にとって貴重な戦力です。

 

令和2年雇用動向調査結果の概要によると、令和2年度のパートタイム労働者の離職率は、23.3%になり、定着率は76.7%になります。
定着率の現状は厳しいのが現実です。

 

パート・アルバイトが辞める理由を分析し、定着率を高める対策を実施することで、定着率を高め、パート・アルバイトの人材確保を実現していきましょう。

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著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部

エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。