リニューアルしたイトーヨーカ堂幕張店。子どももファミリーも店のスタッフも喜ぶ店になりました

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イトーヨーカ堂幕張店・福田店長インタビュー

 

福田氏:イトーヨーカドー幕張店店長

福田氏:イトーヨーカ堂幕張店店長

 

――現在、衣食住フルラインの総合スーパー(GMS)は、コロナ禍の消費の変化などもあって、いろいろな形で模索をされているチェーンが多い。イトーヨーカドーさんの幕張店の改装は全国で大きな興味を持たれています。

 

福田店長:そうですね。各チェーンによってコンセプトが違ってきている中で、イトーヨーカ堂もいろんなことをやりながらどんどん変わってきています。今回の幕張店の改装のテーマは首都圏では初めて衣料品、生活用品と食品をワンフロアで買いまわれる売場を作ることです。日常の買物に最適な広さで、食品から衣料品・生活用品・医薬品まで生活に必要なものが1ヵ所で揃えられ、各売場でテーマごとの訴求ポイントを設けながら、すき間時間での時短ショッピングが可能な導線にこだわりました。

 

改装で力をいれているドラッグ・コスメ売場。GMSでのドラッグ購入機会をあげている。

 

幕張店は食品が圧倒的に強い店で、改装前でも全社5位の売上の店でした。一方、衣料品は順位もだいたい70位という状況で、食品に来てくださっているお客様が衣料品には寄っていただけていない。私はなぜだろうと考えました。

 

改装前に私が商圏分析で確認していたのは幕張地区の商圏の人口構成と、幕張店に来店いただく人口構成が違っていた点でした。イトーヨーカドーはもともと和風が強いしシニアが強いチェーンで、幕張店の来店客数も50、60歳の方が構成が高いのが特徴でした。対して、この地域は30歳代、40歳代のニューファミリーの人口構成が高く、洋風にニーズが高い。このギャップは分かっていました。そこで今回は、新しいM2、F2層のファミリー層に来ていただく売場をどう作ろうかとなったんです。

 

食品はやっぱりイトーヨーカドーがいいけど、その来店の時にお子さんを連れてくるかどうかなんです。子供が保育園や幼稚園に行っている間に買物に来る方だけでなく、子供連れのファミリーみんなで行ったら面白い、「みんなで行った方がいいんじゃないの」という店にしたかった。

 

利用シーンを想定した提案型のコーディネート展開。ファミリーを意識。

 

今回の改装でも紳士と子どものスペース、位置をギリギリになって変えています。特に子どもほどシーズンごとにイベントがある層はいないのでそのスペースを優先したいと考えました。この地域では子どものマーケットはもっと強化をするべきとなり、イトーヨーカドー以外でも、赤ちゃん本舗はわくわく広場を作ったり、くまざわ書店は子どもが本を読めるスペースを作ったり、ゲームセンターのスペースも広げました。

 

ライフステージの変化が多いファミリー層の期待に応えていきたい

 

――やはりGMSは子ども用品が買えるのが良さです。

 

福田店長:そうです。今、子どもの売場っていうのは、特に新しい商品、品揃えとかMDも変化がとても速いので、お客様が見ても面白いと感じられる売場にしたかった。

 

確かに、これまで2階にはイトーヨーカドーの衣料品を中心として、さらに赤ちゃん本舗もありました。しかし改装後は2階に居て滞留されているお客様の数が全然違う。やはりこれはF2とかM2のファミリー層に対応したテナントによる集客効果が大きく、赤ちゃん本舗は、売上高が改装前の約2、3割増です。

 

同時にGMSのイトーヨーカドー側にも紳士も婦人もある。GMSには、ショッピングモールとは違う大分類は隣り合った見やすさ、買いやすさがあるし、衣料と住居があることがイトーヨーカドーの館としての魅力なんです。衣料品、住居がしっかりあることによって、そこに来る頻度も高いし、客数も増えるので、トータルの食品の売上もやはり上がる。食品だけになると、それは完全な目的買いだけになりますし、そこに楽しさ求めませんが、衣料や住居があると、目的買い商品以外にも売場ごとに「あ、ちょっとこの肌着が欲しいな」とかなる。

 

1階の主通路付近の肌着売り場。主通路沿いに肌着を置くのは、思い切った施策とのこと。目につきやすい。

 

今、食品でも鍋が売れ始めていますが、新しいガスコンロやボンベだってしっかり一緒に買い回りしたい。ファミリーにとってGMSってホントありがたい、楽しい場所になりたい。お子さんがいる家族ファミリー層はライフステージの変化などが大きいですが、そういうときに簡単、便利に買物のできる場所は意外に少ないです。

 

店舗スタッフによる店舗独自の装飾。工夫を凝らして、売り場の活性化をしている。

 

今回は衣料品や生活用品を1階にまとめて食品と一緒に買える売場にしました。有職主婦は共働きで少しでも時間を使わないで買物を済ませたい、そのコンセプトの中でGMSをワンフロアにしてワンストップ買い回りができる形にして、極端に言えば、衣料品のカットソーを食品レジに持ってきたりする例も出てきています。食品のチェッカーさんがたたみ方が分からなくて困ったと言っていましたが・・・。特に日用雑貨なんかはそんな例が本当に多いです。

 

お客様からは「コストコみたいなカート無いの?」と聞かれたこともあります。買上点数も、いま9月でだいたい12点以上あって、全社でもベスト5ぐらいに入ります。買上単価も3000円を超えてきています。

 

当たり前のようにティッシュ、トイレットペーパー、洗剤がカゴに入って、その上には生鮮の野菜などが入って一緒に買物をするお客様が多いので、レジの並びも時間がかかる。そんなときにピピットレジスマートフォンのアプリを使ったセルフレジ「IY マイレジ ピピットスマホ」も導入しています。

 

買上点数が増えて改装していない食品も、館も伸びています

 

――ピピットレジは私も使っています。

 

福田店長:ありがとうございます。

 

今まだご利用は1割弱ですが、2、3割の方が利用していただきたいと思っていますし、1、2年後は絶対変わります。使えば基本的には30秒で会計が終わる、そんな時短の最終形が理想だと思います。

 

買上点数が多いは、改装に加えてこの店の食品の強さの相乗効果と思います。幕張店の生鮮3部門の構成比は全社でベスト3です。このコロナ禍で内食が非常に増え、生鮮食品はどうしても必要になります。特に青果は品揃えと鮮度感、特に開店の品揃えが重要なので開店時に100%ができています。

 

食品売り場の入り口には、旬を感じる工夫があり、特に季節感を出しやすいフルーツや野菜の陳列に力を入れている。

 

今回の改装は衣料品、生活用品のライフスタイル(LS)が中心ですが、特に手を入れてない食品の数字も伸びています。改装直後の7月は食品の客数が約1割くらい伸びました。今回の売場のリフレッシュで新しいお客様が来てくれて、LSに合わせて食品を回っていただいた。

 

リフレッシュオープンで来店の状況を見ると、遠方の津田沼や湾岸地区の方が増えている。ロフトも入って新しいお客様がエリア別にも増えていますし、また、今まであまりご来店を頂けていなかった20〜40代のお客様の来店数増加も確認が出来ております。その結果、改装で手をいれていない食品も好調に推移し、店計全体の順位も上がったことから、館としての相乗効果が出た改装になったと考えております。

 

ロフト:幕張地区で初の出店。多くの来客があり、特に若い世代、女性客を取り込めた

 

福田店長:津田沼から来店されるお客様は車の利便性、具体的には無料の平面駐車場の存在です。船橋とか津田沼には商業施設がたくさんありますが、そこには平面駐車場がありません。平面駐車場が店の真ん前にあってすぐ入ったところが食品で、時短の買物ができる。

 

40年くらい前は津田沼戦争なんて言われた時代は、立体駐車場で駐車台数の多さに優先順位が高かったのですが、コロナ禍もあって時短ですぐ買物ができて人と接する機会が少ない点が重要になりました。幕張店が強かった理由は、食品スーパーより売場が広くて、品揃えが多くて、駐車場の正前に食品があることだと思います。

 

1階、国道側正面の婦人衣料。これまでの2階より移動し、大きく変化している。コーディネートを意識した、展開を行っているとのこと。

 

ただその食品の買物の際に、衣料品には行ったことがないということなんです。それが今回、ワンフロアになって「あ、イトーヨーカドーの肌着って結構いいのあるじゃん」って皆さんが言うんです。提案の仕方とかも含めて「よく見ると、商品いいじゃない」って言われるんです。

 

 

店の主体性の高い改装でスタッフからも“こうしたい”が増えています

 

――従業員の方々も意識が変わってきている。

 

福田店長:今回の改装では事業部長をはじめ商品部のマーチャンダイザー、スーパーバイザーが店舖の意見をよく聞きいれてもらいました。先ほど言いましたように、レイアウトでも変更したいと言ったら事業部長が「店がそういうんだったら考えてもいいんじゃないか」とぎりぎりまで聞き入れてもらいました。

 

そのため店舗側の私たちも自分たちの意見が取り込まれた改装だから、当然自分たちが作った売場なんです。

 

文具売場の通路。通路幅が広く取られている。ゴンドラを高くとることで、商品アイテム数を維持している。吊り下げの商品場所表示は店舗オリジナル。分かりにくい、を解消するために店舗スタッフが考案しての表示。

 

これまで食品が強くて、逆に今までだったら衣料品は2階で、極端に言えばなかなか「いらっしゃいませ」を言う機会が少なかったスタッフも、今は1階にワンフロアになって常に「いらっしゃいませ」を言えるような雰囲気になってきているということもある。

 

LSのメンバーから改装以来、どんどん自分で“売場でこういう風にやりたい”とか“販促物はこうつけたい”とかがでてきています。地域を一番知っているのは店なので店舗が地域のお客様に近づいていることが重要ですし、店がどれだけ主体的になれるかが一番のポイントだとは思います。

 

お客様が、売場の前で、「これなに?ママ、なんかすごいよ!」とかそういう場所を店にいくつ作れるのかでしょう。「なんかイトーヨーカドーの幕張店にいくと売場、面白いよね」と言ってもらえるようなお店にしたい。

 

店舗スタッフによる店舗独自の装飾。工夫を凝らして、売り場の活性化をしている。大量陳列とあわせて、賑わいを創出。

 

売場のスタッフがこういった売場の演出をし始めたら、レジの人たちも「私たちもちょっとでもいいから…」って、サッカー台のところにちょっとした花の折り紙だとかをつけ始めています。

 

幕張店では自慢の売場表彰ということを行っています。うちの店のデイリーのマネジャーは自分の家で装飾物を作ってくることもあるんですが、そんなことをしていると家族から「お父さん、何やってんの?」「今度、売場で中華フェアやるから龍をつくるんだ」「じゃあ私たちも手伝うよ」と子どもが手伝ってくれたそうです。

 

さらに実際の売場で龍が飾られた写真を家族も見て「すごいね、これ」って驚いたそうです。ですから売場のスタッフだけでなく、家族の方も表彰しました。

 

店舗スタッフによる店舗独自の装飾。工夫を凝らして、売り場の活性化をしている。スタッフがお子さんと協同制作したもの。同店舗内の売場づくりコンテストで表彰された。スタッフの方、ご家族も喜ばれたそう。

 

これこそが“個人と組織が一体となって互いの成長に貢献する”という意味の「エンゲージメント」です。これがスタッフのやりがいであり、自分のお父さんが働いている職場で自分たちが作ったものが売場に飾られているという家族の喜びでもあります。もちろん龍は今も売場にあります。こんな形も含めて、お客様に喜んでもらいたいという売場、スタッフが少しずつでも増えていけばもっとお客様が満足できる。

 

競合店はチャンス!売るだけでなく楽しんでもらえる売場にします

 

――幕張エリアやイトーヨーカドーの近くには競合店もどんどん登場しています。

 

福田店長:社内では以前から「競合店ができたときが一番チャンスなんだ」と言われています。競合店のオープンで売上高が落ちるのは当たり前で、現にお客様は興味を持っていろんな店に行きます。だからこそ隣に競合店ができても「やっぱりイトーヨーカドーがいいよね」と思ってもらえるような店をどう作るかなのです。

 

幕張地区は特に防災への意識が高いという点を考慮しての売場展開。防災関連が集約されている。アウトドア商品との連携や、隣接することで効果を高めている。

 

幕張店は22年間、営業してきていますが、食品の売り上げは2021年度も5位だったんですけど7月は3位になります。本当に厳しい環境の中で、これだけのお客様に来ていただけることは、今がチャンスです。逆にもっと自分たちが新しいもの、進化できるものを提案していかないといけません。今の数字に満足してると必ず数字は落ちてくる。だからこそ商品だけを売るのではなく、少しでもお客様に楽しんでもらえる売場を作ることも必要だと考えています。

 

――ありがとうございました。

 


コラム執筆 / 三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる

 

長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。

 

実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員


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著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部

エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。