「なぜ高い?」「なぜない?」にどう答えるか~物価高・品薄時代の小売店に必要なクレーム初動対応

コラム

はじめに

物価高や原材料不足、物流環境の変化などにより、小売店舗では価格改定や品薄、数量制限が発生する場面が増えています。こうした状況では、お客様から「なぜこんなに高くなったのか」「広告に出ていたのに商品がない」「いつ入荷するのか」といった問い合わせや不満の声が寄せられやすくなります。
多くの場合、それは最初から悪質なクレームではありません。お客様が困っている、納得できない、説明を求めているというケースも少なくありません。

 

しかし、最初の受け答えを誤ると、通常の問い合わせや不満が大きなクレームに発展してしまうことがあります。特に小売店舗では、パート・アルバイトスタッフが最初にお客様から声をかけられる場面も多いため、誰が対応しても初動が大きくぶれないようにしておくことが重要です。
本記事では、物価高・品薄時代の小売店に求められるクレーム初動対応について解説します。

 

 

 

 

物価高・品薄で増えやすい問い合わせとは

物価が上がると、お客様は価格に敏感になります。また、日用品や食品など生活に必要な商品が品薄になると、「必要なものが買えない」という不安や不満が生まれやすくなります。
店舗で起こりやすい問い合わせには、次のようなものがあります。

 

• 「前より値段が高くなっているのはなぜですか?」
• 「チラシに載っていた商品が売場にありません」
• 「いつ入荷しますか?」
• 「なぜ一人一点までなのですか?」
• 「昨日と価格が違うのはおかしいのでは?」
• 「値札とレジの価格が違います」
• 「アプリクーポン対象だと思ったのに違いました」
• 「他の店舗にはあったのに、なぜこの店にはないのですか?」
• 「取り置きはできないのですか?」

 

こうした声に対して、スタッフがその場しのぎの回答をしてしまうと、お客様の不信感につながります。だからこそ、現場での初動対応をあらかじめ整えておく必要があります。

 

初動対応を誤るとクレームが大きくなる

クレーム対応で大切なのは、最初の数分です。お客様が不満を伝えたとき、最初に受けたスタッフの対応によって、その後の状況は大きく変わります。
また、初動対応は単にお詫びや説明を行うだけでなく、その申し出が「売場表示や陳列などに起因する問題なのか」、それとも「説明や対応のばらつきによるものなのか」を見極める入口でもあります。
ここで原因を切り分けることで、売場の修正や運用改善につなげることができ、同じようなクレームの再発防止につながります。
たとえば、次のような対応は注意が必要です。

 

• 「分かりません」で終わらせる
• 「本部が決めたので」と突き放す
• 「メーカーの都合なので」と責任転嫁のように聞こえる説明をする
• 「たぶん明日入ります」など不確かなことを伝える
• 「他のお客様も同じです」と言ってしまう
• スタッフによって説明が違う
• 判断できない内容を現場スタッフが抱え込む

 

もちろん、現場スタッフだけでは答えられないこともあります。仕入れ価格、メーカー供給、物流状況、全社的な価格改定などは、店舗単独で判断できるものではありません。
そのため重要なのは、すべてをその場で解決しようとすることではなく、分かること・分からないこと・確認が必要なことを整理して対応することです。

 

まずは不満を受け止める

お客様から不満を伝えられたとき、最初から説明や反論を急ぐと、かえって感情を強めてしまうことがあります。
まずは、お客様が困っている状況を受け止めることが大切です。たとえば、次のような言葉です。

 

• 「ご不便をおかけして申し訳ございません」
• 「せっかくご来店いただいたのに申し訳ございません」
• 「分かりにくく申し訳ございません」
• 「ご案内が不足しており申し訳ございません」

 

ここで大切なのは、必要以上に事実を認めることではなく、お客様が不便に感じていることに対してお詫びすることです。
価格改定や欠品の責任を現場スタッフがすべて負う必要はありません。ただし、お客様の不便や不満を受け止める姿勢がないと、説明を聞いてもらいにくくなります。

 

分かっている情報だけを正確に伝える

物価高や品薄に関する問い合わせでは、現場で分かる情報と分からない情報があります。このとき、不確かな情報を伝えてしまうと、後でトラブルになる可能性があります。

 

避けたい表現:
• 「たぶん明日入ります」
• 「来週には入ると思います」
• 「もうすぐ入るはずです」
• 「どこの店も同じです」
• 「メーカーが悪いんです」

 

有効な表現(分かる範囲を明確にして伝える):
• 「現時点で店舗に入っている情報では、次回入荷日は未定です」
• 「入荷予定が分かり次第、売場でご案内いたします」
• 「数量限定での販売となっております」
• 「価格については、仕入れ状況等により変更となる場合がございます」
• 「確認が必要な内容のため、責任者に確認いたします」

 

お客様は、必ずしも完璧な回答を求めているとは限りません。曖昧な説明ではなく、誠実に確認しようとする姿勢が重要です。

 

「ありません」で終わらせず、代替案を考える

品薄や欠品の場合、「ありません」「入荷未定です」で終わってしまうと、お客様の不満が残りやすくなります。可能であれば、代替案を提示することが大切です。
たとえば、次のような対応です。

 

• 同じ用途の商品を案内する
• 容量違いの商品を案内する
• 近い価格帯の商品を紹介する
• 別ブランドの商品を案内する
• 入荷予定が分かる場合は伝える
• 関連する売場へ案内する

 

お客様が求めているのは、必ずしも「その商品そのもの」だけではなく、「困りごとを解決すること」である場合もあります。代替案の提示は、クレームの拡大を防ぐだけでなく、購買機会の維持にもつながります。

 

パート・アルバイトが抱え込まないルールを決める

小売店舗では、パート・アルバイトスタッフが最初にお客様対応を行う場面が多くあります。しかし、すべての判断を現場スタッフに任せてしまうのは危険です。あらかじめ、社員や責任者へ引き継ぐ基準を決めておく必要があります。
たとえば、次のような場合は責任者へ引き継ぎます。

 

• 返金や値引きを求められた場合
• 値札とレジ価格の違いを指摘された場合
• 長時間にわたる申し出になっている場合
• 強い口調や威圧的な言動がある場合
• 他のお客様への影響が出ている場合
• スタッフ個人への非難になっている場合
• SNS投稿を示唆する発言がある場合
• 本部判断が必要な内容の場合

 

「どこまで自分で対応し、どこから引き継ぐのか」が明確であれば、スタッフは安心して初動対応ができます。逆に、基準がないと、スタッフによって対応がばらつき、クレームが大きくなる原因になります。

 

現場で共有したい基本フレーズ

物価高・品薄時の問い合わせに対して、スタッフが迷わないように、店舗で基本フレーズを共有しておくと効果的です。

 

価格改定に関する問い合わせ
「ご不便をおかけして申し訳ございません。仕入れ状況等により、価格が変更となる場合がございます。詳細について確認が必要な場合は、責任者に確認いたします。」

 

欠品に関する問い合わせ
「せっかくご来店いただいたところ申し訳ございません。現在こちらの商品は品切れとなっております。現時点では次回入荷日は未定です。」

 

数量制限に関する問い合わせ
「多くのお客様にお買い求めいただくため、現在はお一人様〇点までとさせていただいております。ご理解いただけますと幸いです。」

 

レジ価格と棚札価格の違いを指摘された場合
「ご指摘ありがとうございます。すぐに確認いたしますので、少々お待ちください。」

 

このように、基本となる言い方を店舗全体でそろえておくことで、初動対応のばらつきを減らすことができます。

 

まとめ

物価高や品薄が続くと、小売店舗では価格や在庫に関する問い合わせや不満が増えやすくなります。しかし、その多くは最初から大きなクレームではなく、説明を求める声や不便への申し出から始まります。
大切なのは、初動対応でお客様の不満を大きくしないことです。そのためには、パート・アルバイトを含めた全スタッフが、基本的な受け止め方、説明の仕方、引き継ぎ基準を共有しておく必要があります。

 

店舗アセスメント覆面調査では、こうした初動対応が現場で実際に行われているか、スタッフごとに対応のばらつきがないかを客観的に確認できます。物価高・品薄時代だからこそ、現場スタッフが迷わず対応できる体制づくりを見直してみてはいかがでしょうか。

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著者プロフィール
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング編集部

エイジスリサーチ・アンド・コンサルティングは、客観的調査データを活用したCSマネジメント体制を確立。ミステリーショッピングを中心とする「トータル・コンサルティング」で、お客様の店舗に最適なソリューションをご提案します。