現場の実行力を上げるための
思考改革への斬新な取り組み

株式会社静鉄ストア様

静岡市を中心に、静岡県東部・中部・西部地区と合わせて31店舗の「しずてつストア」を展開する株式会社静鉄ストア様。2013年以降2ヶ月に1回、評価基準としてエイジスのミステリーショッパーを導入し、接客品質の向上に活用されています。

お客様の課題

  • 個店格差のない高水準なサービスの提供

お話を伺った方

株式会社静鉄ストア

代表取締役社長 森下登志美氏

 

店舗運営部CS向上・サービス課 課長 小田由起子氏

企業概要
平成11年1月27日 設立
代表者:代表取締役社長 森下登志美
本社所在地:〒420-8555 静岡県静岡市葵区末広町95番地
売上454億円(2020年実績)
資本金:1億円
店舗数:31店舗
関連企業 静岡鉄道株式会社、他グループ企業24社

 

新社長の経験を活かした独自の改革

 

静岡市を中心に、静岡県東部・中部・西部地区と合わせて31店舗の「しずてつストア」を展開する株式会社静鉄ストア。静鉄グループの一員として「安全・安心・健康・美味しい・楽しい」をモットーに、常にお客さまの視点に立ち、生活に寄り添い、地域に貢献する取り組みを続けています。

 

コロナ特需の反動を受ける厳しい環境下、2021年4月に社長交代で就任された森下登志美代表取締役社長は、サービス品質のレベルアップのための「現場の実行力を上げる」取り組みに力を入れています。

 

観光や航空などさまざまな業界での経歴を持つ森下社長は、ご自身の経験を活かした独自の改革について話してくださいました。

 

御社の強みは?の問いかけに、「時代が変われば『強み』だったものが通用しなくなることもある。変動の激しい時代に自社の強みを語るのは難しいことです」と話す森下社長は、変わらない強みは『お客さま』という財産だと話されます。

 

森下社長は、固定客を掴む施策を航空業界のマイレージに例えます。

 

「航空業界でいう固定客とは、観光客ではなくビジネスで利用されるお客さまです。マイレージの導入はリピーターとして単価を増やしてもらうために効果を生んできましたが、オンラインで航空券を購入する時代になったことで、継続して固定客を掴むためのサービスのあり方も変わりました」。森下社長が自社の強みという『お客さま』すなわち固定客の維持拡大のためには、サービス提供に対する意識の改革が必要と考えています。

 

サービスについても、森下社長には明確な指針があります。

 

「スーパーマーケット業界でいえば、EDLP(エブリデー・ロープライス)の店舗とそうでない店舗では、商品や品揃え、価格が違っても、お客さまに提供するサービス品質が変わるわけではありません」。

 

業界の4つの基本である、挨拶、欠品防止、クリンリネス、鮮度アップの徹底という基本こそ一番大切だと話す森下社長は、「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」の言葉ひとつの改善に価値があると話します。

 

ミステリーショッパー調査の活用

同社がエイジスのミステリーショッパー調査を導入したのは、2013年。それ以降2ヶ月に1回、定期的に調査を行い、接客品質の向上に活用されています。

 

「社外の目で客観的に調査していただくことで、接客の均一化を図ることを目的に導入しました」と話すのは、CSインストラクターとして全店舗のサービス品質の向上を一手に担う、店舗運営部CS向上・サービス課の課長、小田由起子氏。他にも、サービス品質の波があることに対する原因の追究も目的のひとつだったそうです。

 

調査により、業界の4つの基本のチェックを含む多岐にわたるサービスレベルが点数でわかることで、現場への評価もわかりやすく、すべきことも明確になったという小田氏。

 

「ミステリーショッパー調査の導入前は、店舗ごとのサービスレベルの差に対して現場は無頓着でした。調査を導入したことで、自店の評価や他店の評価を現場が意識するようになりレベルアップが図られています。また、店長交代などのタイミングでサービス品質が変わることなど、サービスの波に対する課題が調査で明確になることも、課題解決の上で役立っています」(小田氏)。

 

森下社長が仕掛ける、サービス向上のための思考改革

「マザーテレサの言葉の中に『し・こ・こ・し・せ・う』というキーワードがあります」と森下社長。

思考が変われば、言葉が変わる。
言葉が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、性格が変わる。
性格が変われば、運命が変わる。
この言葉の頭文字を取ったキーワードです。

 

「私は、サービスレベル向上に対する現場の実行力を上げるために、一人ひとりの『思考』から変える必要があると思っています。ですが『思考を変えよう』といっても、そう簡単に誰もが理解できるものではありません。そのために『具体的に』『何をすれば良いのか』を『明確に』伝えることが重要です」(森下社長)。

 

森下社長は「愛車」と自称する自転車で足繁く店舗を訪れ、レジスタッフにも気さくに声をかけます。調査で点数が低かったことなどを伝えた際、自店の点数の低さに関心のないスタッフがいることに着目し、サービス品質の向上に直結する「店舗内での情報共有」の徹底から着手。サービスの一層の向上を意識し、「具体的に」「何をすればよいのか」を、現場の一人一人にわかりやすく明確に示す取り組みがスタートしました。

 

 

「思考を変える」ためにスタートした、非常にわかりやすい施策の一つが、「レッドカードのジャケット」です。

 

同社の店長の制服のジャケットの色は紺色。ミステリーショッパー調査で80点以下だった店舗の店長のジャケットの色を、赤い「レッドカードのジャケット」に変える制度を導入。対して、85点以上を獲得した店舗の店長には緑色の「グリーンカードのジャケット」を導入。80点に満たなかった店舗の店長は赤いジャケットを着て店長会議の出席や店内の巡回に。常連のお客さまはジャケットの色の変化に気付きます。なぜ?の質問も飛び出します。

 

 

「現場の意識が劇的に変わりました」と森下社長。赤いジャケットの屈辱をバネにサービスレベルの向上が図られただけではなく、緑のジャケットを身につける高得点店舗が画期的に増えたのです。

 

「統計学では、有意水準の5%を除して分析しますが、店舗のサービスでは割愛はできません。低水準の5%の底上げを行うことこそがサービス品質向上の鍵。その対策が急務でした。低水準サイドの店舗のポイントが上がれば、個店格差のない高水準なサービスが実現します。そして、全ての店舗が一度でも緑色のジャケットを経験した時点で、この赤いジャケットの導入は終了します」と森下社長。

明確なゴールがあることで、どこに向かうか、何をすべきかを、店長はじめ、現場にいる全てのスタッフの思考が変わり始めました。

 

時代の風雲児が描くスーパーマーケットの未来

「スーパーマーケットに来店するお客さまは、なるべく時間をかけたくない方が多いです。たとえば昨今はカット野菜の需要が高いのですが、ここからも需要の大きな変化を感じています。世界がどんどん変わっていくように、スーパーマーケット業界のありかたも変化していくと思っています」。メーカー、卸、販売の垣根がなくなっていくと予測する森下社長。メーカーがECショップを立ち上げたり、卸企業が商品を発売したり、すなわち販売の形態が変化していくことも必至でしょう。そんな中でも普遍的なものが「お客さまが喜んでくださるサービス」であると森下社長は語ります。

 

もちろん、変化を好機に変える施策はすでに進行しています。森下社長は著名人や文化人との交流も深く、広い人脈をお持ちです。その人望の厚さがさまざまな人々の惜しみない協力を招き、ワインのエキスパートと元サッカー日本代表通訳のフローラン・ダバディ氏による店内でのワインとフランス文化に関するセミナーや、京都の有名バナナジュース専門店のフランチャイズ店の招聘、また2021年11月には日本初上陸の台湾ドーナツ「Bobii Bobii(ボビイボビイ)」の販売をいち早く開始するなど、マスコミも巻き込みながらイベント性を持たせた新しい企画を次々に繰り広げています。

 

 

時代の風雲児を感じさせる森下社長は、一体どんな未来を作るのでしょうか。溢れるアイディアと強靭な実行力から生み出される新しいサービスで大きく変わりゆくしずてつストアから目が離せません。