「カルディ」調査結果 【無料資料ダウンロード】
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング(ARC)は、ミステリーショッピングのプロ集団であり、店頭のリアルな実態と、それが顧客の感情、再来店の意向に与える印象などを調査・分析するスペシャリスト集団です。ARCスタッフ、調査員が好調企業の“店頭の実態=FACT”を調査し、それが顧客の「また来たい」という印象(これを『再来店動機』と呼んでいます)に与える要因をお伝えするのがこの連載です。
私は自身の業務として各社の社内研修などの講師をさせていただくことが多いのですが、研修の中ではストアコンパリゾン(=店舗視察、以下「ストコン」)の重要性を必ず強調します。ストコンで大切なのは“お客さま目線”で実際に買ったり食べたり使ったりして店頭の商品や価格、サービスの“良さ”を見て感じることが重要で、こうして学んだことでお客さま満足つながる事実があれば積極的に活用するのが最終目的です(もちろん事前の実験は必須ですが)。
今回の視察先は多くの女性、主婦客に大人気な店舗「カルディコーヒーファーム」です(以後、「カルディ」で略)。1977年にコーヒーの輸入商社として創業したこの企業(会社名「キャメル珈琲」)は原料の生産から焙煎、加工、販売まで一貫して工程を担うコーヒー豆を核商品にしながらその他の加工食品、酒などにまで商品領域を広げ強い支持を得ています。
今回の調査スタッフは女性4名、男性4名の構成ですが結論から言えば、女性に大人気な店、商品を体感した男性陣にも高い満足を与えられるという結果になりました。本コラムを読んだり、調査データをダウンロードいただいたみなさんには、改めてこうした広い客層に支持される店の商品や売場を視察していただきたいと考えます(本調査時期は2~3月期)。
世界各国の本格的な味 簡単便利に調理できる魅力
今回、調査スタッフの印象に残ったのは他社では扱っていない商品でした。それはプライベートブランド(PB)もあれば、そうでない商品もありました。
創業の輸入商社という強みもあって『輸入食品を豊富に扱うカルディらしく、日本ではなかなか食べられないような海外の味をPB商品として作ってしまうところが唯一無二の存在価値を見せつけている』(『』内は調査スタッフのコメント、以下同じ)として、輸入商品やそれをそのままPB化してしまう点を魅力とするコメントがありました。筆者もコーヒーと一緒に購入しますが『スペインプロシュート切り落とし 198円は価格帯と本格的な味、手ごろなサイズが魅力』と本当にうれしい商品でしょう。
同時に子会社の「もへじ」を通じて開発、仕入した日本各地の商品も特徴的で『“もへじが選んだ日本の逸品シリーズ”は日本ブランドの他社商品を厳選した特別感のある商品。他のメーカーの商品をアピールする潔さが好印象』として、各地の生産者とつながったおいしい商品を揃えていました。『梅干しキムチ537円はTVで紹介されたとPOPあり。甘めの梅干しがキムチ味をまとっていて、不思議なおいしさ』も感じました。
輸入商品ということで一部にクオリティを懸念する声もあるでしょうが、品質へのこだわりも伝わっていてドライいちじくなどは『特にPBでは化学肥料、農薬不使用やこんにゃくを使って低カロリー、食物繊維、カルシウムが豊富に含まれている、食塩、油不使用、硬化油不使用などの健康に気を使った商品も充実している』と高い評価でした。製造小売業としての強みを発揮しているのでしょう。
今回は実際に作ったり食べたりしたスタッフがほとんどでした。
例えばもち麦入りスパゲッティとパスタソースは『買って一番、良かったかも。生パスタは今話題になっているもち麦で食物繊維が通常の2倍でダイエットに良いしパスタソースは10回分でこの値段なので、1食200円以下。サイゼリアより安い』という声がありました。期間限定商品(?)のバイク缶クランチチョコレートは『チョコレート商品のパッケージの“缶”は置き物として家に置いておきたくなるようなデザイン。ただの包装ではなく商品の一部であると思った』など思わず手に取ってしまう商品もありました。期待以上の商品や思わず買ってしまう商品が多数ありました。
調理の簡単な商品も多く話題の塗って焼いたらカレーパン(332円、本体価格)の『トースト用に塗るだけのクリーム。時短かつ美味しかった。玉ねぎやマッシュポテトが入っている』や、ビビンバは『ごはんと混ぜるだけで本格的なビビンバになる。具材がついているのが非常に嬉しい』な本当に簡単でした。レンジでできるチャーシューは『肉の処理時間(4分)とレンジ(8分)+蒸らし(8分)の合計20分でこんなにジューシーなチャーシューができるなんて・・・。お店の味が食べられて大満足』でした。
本格的な味が、調味料なども揃っていて簡単便利という商品は他店にはない魅力的な商品でした。
安くはないが高くもない 買ってしまう売価と販促
価格は『決して安くなく、割高と感じるが輸入商品の割には手が届く価格設定。しかしカルディでしか買えない特別感、レア感、希少性を感じるのでつい購入してしまう』という声がありました。また商社出身ということで例えば菓子のティムタム各種は“398円”で『他のスーパーの菓子売場にもあるが500円台で他店よりも安値のお得。輸入商品に強いカルディだからこそ可能になっている値段だし、一部にはとてもお買得な商品もある』と、シビアな価格比較でも許される売価設定です。
売場では『安価な商品が混ざっていると手を出しやすくなる。100円台の商品がお買得に思える(辛ラーメン 127円/ラ・プレッツィオーザ ホールトマト缶 127円/エコバッグ 280円)』など値入ミックスなどで安さを作る技術も実現していました。
輸入品が多いということで、こういった商品の販売政策上に重要なことは、輸入・仕入したら“売り切ること”。カルディでは定期的に各店で順に“開店〇周年セール”を実施しコーヒー豆半額や全品10%引きなどのプロモーションを実施しています。同時に店頭でもSDGsを訴えながら『フードロス削減に取り組んでいて、賞味期限の近い商品が値下げされている。地球にもお財布にも優しい。“賞味期限が近いためお得”“賞味期限が近いため〇〇円引き”“SPECIAL PRICE”“お買得”“大特価”“〇~〇期間限定”“SALE”“お値下げしました”など色々なお得アピールPOPがあった』とアイテム、期間限定の販促を行っていました。
SDGsという点からはキャメル珈琲は“渡り鳥にフレンドリー”な豆の生産体制を産地に構築したり、“女性の自立支援、社会的地位の向上、経済的環境の改善のために設立されたプログラム”として「ウーマンハンドコーヒー」を販売するなどサスティナビリティを追求する商品が多くあります。これらは商品が価格以上の価値を持つ商品として広い年齢層、客層に伝わっているのでしょう。
ナショナルブランド商品が少なく他店と価格比較がし難いのはもちろんですが、それ以上の“安さ”“値ごろ感”を感じるのがカルディでした。
コーヒー、ワインの資格制度 胸元バッジで安心感高める
カルディのスタッフは筆者がこれまでに見た限りでは、ほとんど女性スタッフです。カルディと言えば店内で飲める無料のコーヒーサービスが有名で『店頭で配っていたコーヒーはブラックとミルク入りの甘いものが選べるようになっていた。いろんな人が選べるようになっていて嬉しいサービスです』という声もあり、また『入口でコーヒーを手渡ししているスタッフは通路を通るお客さまに声掛けを行っていた』など接客もなされていました。
店内には『メディアに取り上げられて、商品が話題になるカルディらしく、お客「〇〇はありますか?」、店員「完売してしまったんです」というやり取りがよく聞こえてきた』といった数多くに会話があるのも店の特徴です。店内は写真撮影OKで『個性的な商品が多いのでどれを手に取れば良いか迷う時があるが、商品名で検索すればインスタやブログなどで活用方法や味が多くレビューされているので安心して買うことができる』などSNS自体が商品説明や販促につながっているのも“今風”です。
レジ接客も的確で『2名並んだ時点ですぐに隣のレジを開けてくれた』という対応です。レジではアプリを勧めながら『ティムタムを1つだけカゴに入れてレジに行くと“ココナッツクリーム味はカルディ限定で他では買えないんですよ”と促されまんまともう1つ買ってしまった(笑)』とか『レジにてスタッフにこのバジルソースは和えるだけですか?と質問したら、「こちらはこれ1つで完結するソースですので、そのままパスタに混ぜるだけでおいしく召し上がれます」とアドバイスをくれた』といった解説もされました。
キャメル珈琲は社内制度としてコーヒー、ワインなどの研修を実施しており、店頭では『スタッフの胸にバッジが付いていて【ワイン・食品・コーヒー・経営】の試験のようなものがあり、それをパスした印だと言っていた。その分野に詳しいことが分かるので声がかけやすい。調味料など色々知っている人は、スパイスなど種類が多いので、買物を楽しめる。初めての人は店員さんに聞いて深い知識を得られると思った』と感じました。輸入商品は“他には無い”という強みの反面、テレビCMもない“知らない商品”ですからこういうアイテムの特徴をしっかり伝えていくことは最重要です。
今は、円安が進んで輸入商品主力の商売は難しくなっていますが、そんな状況でもきちんと品質、価格、サービス面の魅力を高め続けていることが広い客層の開拓や固定客づくりにつながるということが、今回のカルディの調査で理解できました。
詳細な調査結果は「優秀チェーン7つのエクセレント」を下記よりダウンロードして頂けます。
ぜひダウンロードしてご覧くださいませ。
著者プロフィール
三浦美浩
1987年 東北大学卒業、損害保会社を経て商業界入社、「食品商業」編集長、「販売革新」編集長
2011年8月 商業界取締役就任
2017年1月 独立しロジカル・サポート㈱設立
2020年4月 エイジスリテイルサポート研究所所長に就任(兼任)、現在にいたる
長年にわたり小売業の現場に関わり、執筆活動と共に、分析や提言も行っている。
従業員教育にも関わりがあり、現場に即した研修には定評がある。
実査、報告書
エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング㈱ 調査員